楊彦君 731部隊罪証陳列館副館長 上海交通大学歴史学教授に就任

 侵華日軍第七三一部隊罪証陳列館副館長の楊彦君 (Yan-jun Yang) 教授は2023年10月12日付で清華大学において歴史学博士号を授与されました。学位論文の題目は「戦時における日本の医学犯罪の歴史考察 — 七三一部隊を中心として」(Historical Review on Japanese Wartime Medical Crimes — Taking Unit 731 as the Core)です。この種の学位論文による学位(博士)授与は国内外で初めてといえるでしょう。

 さらに、2024年1月1日付で上海交通大学「戦争審判與世界和平研究院」(戦争裁判と世界平和研究院)歴史学教授に就任されました。現在は生物・化学戦史、戦争裁判と平和学の関連研究と教育に従事とのことです。

 侵華日軍第七三一部隊罪証陳列館の特聘教授も兼任されています。

 

 上海交通大学戦争審判與世界和平研究院のホームページ: https://wctwp.sjtu.edu.cn

 楊彦君教授のプロファイル: https://wctwp.sjtu.edu.cn/Web/FacultyDetail/74?w=64&p=3 


戦時における日本の医学犯罪の歴史考察

—七三一部隊を中心として

楊 彦君

 (2023年9月11日 清華大學博士學位論文) 

  要  旨

   戦時日本の医学犯罪とは、主として、七三一部隊、一六四四部隊と陸軍軍医学校などの日本軍事医学機関、また陸軍病院、野戦病院及び兵站病院などの陸軍附属病院、九州大学と『満州』医科大学などの高等教育機関が、19331945年において、秘密的に生化感染、凍傷実験、生体実験などの違法的な人体実験と生物戦を実施したことを指している、その被害者の中に、中国人、ソ連人、アメリカ人と朝鮮人が含まれる、これは明らかに人類文明史の中に恐ろしい戦争犯罪と非人道犯罪であり、世界歴史においても極暗黒な一ページでもあったとみられる。

本稿は先人の研究に基づいて、日本医学犯罪の証拠の整理まとめ、また、医学犯罪の非人道的な特徴および戦後の責任追及においても突破的な進展を遂げている。

まず、戦時日本医学犯罪に関する証拠を収集し、戦時日本医学犯罪歴史の再現ができた。これまで学界において戦時日本医学犯罪証拠のまとめた結果では、厳密な論理や完備・正確な証拠チェーンとなってないため、関連史料に対する系統的な分析と解読を行うには不足点があった。本稿は人体実験報告書、戦後の裁判記録、口頭史料と戦争遺跡に関する資料を利用し、日本医学犯罪の準備、実施、危害、主体およびその責任を系統的に考察して、医学犯罪の発生原因、経過および影響を分析し、戦時日本医学犯罪の組織化、極端化と『エリート化』の特徴を深く剖析した。

  その次、戦時日本医学犯罪の隠秘過程、軍事目的及びその本質特徴を開示した。特に新しい史料の掘り起こしと新しい見地の発表において、横浜裁判の法廷記録、七三一部隊遺跡の考古資料と被害者に関する訴訟文書などを利用し、九州大学の医学犯罪、七三一部隊の戦時特徴、人体実験と生物戦による大きな危害を検討したことによって、これまで当分野において学界の研究不足部分を補うことができた。また、七三一部隊の生物実験報告書、凍傷実験報告書、毒ガス実験報告書及び駐蒙軍冬季衛生研究班の人体実験報告書を改めて解読し、犯罪主体と被害者たちの全体状況を考察した上で、人体実験の隠秘過程と軍事目的、及びその非人道と非倫理的な本質特徴を開示した。

最後、戦時日本人体実験と生物戦の戦争罪責を考察した。本稿は横浜軍事裁判とハバロフスク裁判の日本医学犯罪の責任追及における独特な価値を掘り起こし、ニュルンベルク裁判が『戦争罪と非人道罪』に対する規定を借用して、人体実験と生物戦の犯罪本質を追究した、さらに、計画者、組織指導者および参加者の戦争罪責を判定した上で、戦後裁判の歴史的な貢献およびその時代に限られた限界性、またその当時の価値を判明することができたのである。

 

 

キーワード:戦時日本;七三一部隊;医学犯罪;人体実験;生物戦